びょうぶのトラ
むかし、一休さんと言う、頭の良い小僧さんがいました。
一休さんの「とんち」のひょうばんを聞いて、殿様がお城に一休さんを呼びました。
「そこにあるびょうぶのトラを、縛りあげてくれぬか。夜中にびょうぶから抜けだして、悪いことばかりするので、こまっておるのじゃよ」
もちろん、そんなことあるはずありません。びょうぶに描かれたトラは、キバをむいて、いまにもおそいかかってきそうでした。
一休さんは、
「ほんとうに、すごいトラですね。では、しばりあげてごらんにいれます。なわをよういしてください」と、言いました。
家来が、一休さんになわを渡しました。
「では、トラをびょうぶからおいだしてください。すぐにしばってごらんにいれます」
と、殿様に言いました。
もちろん、絵の中のトラは出てきません。
殿様は一休さんの頭の良さにおどろいて、ほうびをあげました。